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ボッティチェリ La Primavera 「プリマヴェーラ(春)」  ダンテの神曲の楽園説



La Primavera  「プリマヴェーラ(春)」 部分


以前の記事で、 「プリマヴェーラ(春)」が花婿ロレンツィーノ(ロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコ・デ・メディチ)と花嫁セミラミデ・アッピアーニへの贈り物と書きました。

ところがロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコが最初の所有者ではないことが判明していたようです。

とういうことは結婚を象徴するオレンジの実、二本の月桂樹(ローレル)が示すロレンツォの名ではなかったのでしょうか。

過去記事
ボッティチェリ 至福の花々 (サンドロ・ボッティチェッリ)

さて2011年4月更新です。  さらに新しい発見!



友人のsai が2010年5月にアップした記事に、「クロリスがフィオレッタ。そして花の女神フローラになりそこねたフィオレッタにかわり、メディチの分家に嫁ぐセミラミーデ・アッピアーノに変身させて、ロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコに「結婚の祝い」として、今度はロレンツォ・デ・メディチが依頼したのではないだろうか。」と推測をし、ついにこの2011年4月に本文の最後に追記されたのが。

「文献学とメルクリウスの結婚」からは、プリマヴェーラに描かれた人物が書かれているらいい。左が・・・」というスフォルツァ家の書記官、チッコ・シモネッタの子孫のマルチェロ・シモネッタ(Marcello Simonetta)の説の更新。

記事 プリマヴェーラ La Primavera

ボッティチェッリは、「プリマベーラ 春」の作品のあとにヴィラ・レンミ(レンミ荘)で、マルティアヌス・カペッラの「文献学とメルクリウスの結婚」からの作品をフレスコ画にしています。

記事 「サンドロ・ボッティチェリ ヴィラ・レンミ」

ということは、ボッティチェッリの「「プリマベーラ 春」は、マルティアヌス・カペラの「文献学とメルクリウスの結婚」からの作品をもとにしている可能性が高いのです。西風ゼピュロスがもしもアナタシアならば。




それではダンテ説とあわせて、マルティアヌス・カペラ説の花の意味を付け加えました。続きをどうぞお読みください。


それではこの寓意画は・・・

wikiより引用
キャサリン・リンドスコーグ (en:Kathryn Lindskoog) は、「プリマヴェーラ」がダンテの「神曲」のエデンの園を視覚化したものだと解釈した。リンドスコーグの見解によれば、この絵画に描かれているのは左から、アダム、神学的徳 (Theological virtues)、ベアトリーチェ、マティルダ、イヴ、サタンである。

なんだか、これもアリという感じです。当時の新プラトン主義的寓意を考えればですね。死を暗示するような「プリマヴェーラ(春)」は、ダンテの神曲を視覚化したものなら、死後の世界を描いているわけですから。


そしてメディチ家のプラトン・アカデミーにおける「ネオプラトニズム(新プラトン主義)」の象徴作品といえるからです。このプラトン・アカデミーでは、プラトンの命日に、プラトンの「饗宴」を朗読していたといいます。

記事 「プラトン 「饗宴」 アプロディーテーの裏話」

ボッティチェリはダンテの神曲を愛読し、またプリマヴェーラのあとのことですが、挿絵も描いていますよね。そしてロレンツォ・デ・メディチもダンテの神曲を好んでいたのです。

このダンテの「神曲」もネオ・プラトニズムといわれているひとつです。

それではマルティアヌス・カペラの「文献学とメルクリウスの結婚」では彼女はいったい誰なのでしょう。

記事 プリマヴェーラ La Primavera


今日は、この 「プリマヴェーラ(春)」に描かれている人々と花々を中心に綴ろうかと思っています。

まずは人物について、ダンテの神曲のエデンの園からの解釈を用いてみたいと思います。結婚の贈り物とされた解釈は先の過去記事から。

ダンテ「神曲」では、煉獄山の頂上にあるのが常春の楽園。これがアダムとイヴが追放されたエデンの園になるわけです。ここで地獄編から共にした偉大な詩人ウェルギリウスと別れることになります。

記事 ダンテの神曲 地獄編トピック



これがムスカリではないかと


先にも書いたとおり、ロレンツォがこの作品の最初の持ち主でなかったことから、結婚の贈り物という概念をすてて考えると、ダンテの神曲説がわたしの中でピッタリと収まるのです。

この死人のようなゼフィロスが神曲のサタンだというのですから。こんな元気のないサタン。そういえば、煉獄編のこの地上の楽園では、南東の風アペリオテスの縄張りだからでしょうか。

西風ゼフィロス(ゼピュロス)はローリエの木の間から、死人のようにクロリスを見つめています。

ダンテの常春の季節には、春の訪れを告げる豊穣の風ゼヒュロスは入ることを許されていないのかもしれません。

ところが「記事 プリマヴェーラ La Primavera」では、この私の疑問を解決してくれたようです。常春には西風はないという疑問を。



ロリエの下の西風ゼピュロスとクロリス
サタンとイヴを象徴


神話「クピドとプシュケ」で、プシュケをクピドのもとに届けるゼフィロス(ゼピュロス)は、アネモイのなかで比較的穏やかなといわれているような姿を描いています。

ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」で、ゼピュロスが登場しているのは、この「クピドとプシュケ」にあるゼピュロスの「送り届ける役目」として描いている気がします。
記事「クピドとプシュケ の物語

ということは、ダンテ「神曲」では、サタンはこの楽園がある「煉獄」と「地獄」に位置しています。つまりゼピュロスは「クピドとプシュケ」のように、「プリマヴェーラ」では「死者を送り届ける役目」をして描かれたともいえますね。

この「プリマヴェーラ」ではゼフィロスはアポローンを象徴する月桂樹に身を預けている姿が描かれています。月桂樹は栄誉、勝利、名誉を象徴し、古代の競技の勝者、栄誉を讃えて詩人に贈られたりしました。それを月桂冠といいましたね。




ローリエ By Sreechandra Banerjee


神話でもおなじみですが、「変身物語」でクピドがアポローンに欲望の矢をうち、ダプネーを追い回します。とうとうダプネーは月桂樹となりアポローンから身を守ります。この変身物語で変身したダプネーにアポローンは「私の聖樹になって欲しい」といいますと、ダプネーは月桂樹の葉をアポローンの頭に落としたことが由来です。

このローリエが、ロレンツォの名を示すそうですが・・・。

でもこの作品がみつかったヴィラ・メディチの持ち主のロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコ(Lorenzo di Pierfrancesco de' Medici 1463–1503)もロレンツォです。


女神フローラの12のお花 


そしてゼフィロスも欲望のためにクロリスを犯してしまいます。このゼフィロスとアポローン。二人は一人の少年を愛し競ってもいたのです。

二人をみかけたゼフィロスは突風を起こします。そこで美少年ヒュアキントスは死んでしまうのですが、その血からうまれたのがヒヤシンスです。あるらしいんですけど何処に描かれているんでしょう。


この西風ゼフィロスとアポローンの欲望は七つの大罪だと「色欲」ともいえます。

ボッティチェリの描いたゼピュロスの表情は「憤怒」の表情。七つの大罪にもあります。ダンテの神曲にあてはめると、ゼピュロスはサタンだとありました。サタンは七つの大罪で「憤怒」の悪魔を象徴しています。

このヒヤシンス、花の女神にとって重要な12のお花のひとつなんですね。この12のお花がこのプリマヴェーラにも描かれているのではと思っています。




口元のヒメツルニチソウ


クロリスは神話の説のひとつにある虹の女神イーリスの夫ゼピュロスと結婚することになるのですが、植物の花を咲かせる春の女神クロリスに、悪魔を象徴する左手でゼフィロスは背後からクロリスを襲います。

こうして犯した代償として結婚をすることになり、クロリスは花を支配する力を与えられ花の女神フローラと変身します。

オウィディウスの「祭暦(Fasti)」にあるクロリスの言葉から、フローラと呼ばれる由縁のお話しがあります。12のお花もこちらから。

記事 「花の女神フローラ フロラリア祭 Floralia」

作品では一体何をあらわしているのでしょう?イブが知恵の実をへび(サタン)の誘惑にあって食べるところなのでしょうか。それとも犯す場面と結婚の代償をあらわしているのでしょうか。




ペリウィンクル(ヒメツルニチソウ)


口元のヒメツルニチソウの花言葉は「優しい追憶」、「朋友」だそうです。クロリスの口元の花の色は青だと思われますが、白やピンクもあるんですね。春いちばんの花です。




処女を愛に導くマツヨイセンノウ


口元にはヒメツルニチソウ。そして足元にこのマツヨイセンノウが描かれています。このプリマヴェーラ(春)には、花々だけではなく樹木も描かれています。月桂樹のほかにイチイも描かれているといいます。



死の象徴 イトスギ


クロリスに悪魔の象徴ともいえる左手をダラリとのばしたゼフィロスですが、二人のあいだには糸杉がみえています。花言葉は死・哀悼・絶望ですが、このイトスギはここだけに描かれているのではありません。


プリマヴェーラ(春)
禁断の果実、イトスギ、シダなど


イエスが磔にされた十字架は、この木で作られたという伝説がありますが、シェークスピアの台詞にも「棺は糸杉で・・・」」という物語がありました。

牡鹿を殺してしまったキュバソリスは「永遠に哀悼の心を持つものに変えてください。」とアポローンに願い、糸杉へと変身させるのです。

ゼフィロスの妻、虹の女神イーリス(イリス)がアイリスの由来です。ヘラに仕えていたイリスはヘラの夫であるゼウスに求愛され、ヘラに願いでて虹の女神になるのですが、そのときに神酒の滴がアイリスになったといわれています。

そのアイリスが、クロリスの足元に描かれています。



ちょっとみずらいかも・・・、クリックして画像をみてくださいな。

ゼフィロスが犯したことを悔いて結婚をすることになったときに贈られた花だといわれています。花言葉は「愛」だったでしょうか?

神話のとおりに象徴するものを描いているボッティチェリです。オウィディウスの祭暦にもフローラに変身するクラリスの場面があるとおりに描かれていますが、必ずしも「祭暦」とは限りません。オウィディウス以前の伝承にもあるからです。シャルル・ペローの「シンデレラ」とグリム兄弟が伝承をまとめた「灰かぶり姫」のようなものです。書き手によって筋書きが変わってしまう。



かわいい花々たちです。右上がアイリスです。ここにはムスカリアネモネカモミールデイジーバラスミレクリスマスローズユリなど40種類の花々が千以上描かれているそうです。左の真ん中はヴィーナスの足元。そこにヘレボルス(クリスマスローズ)。


の一番下の画像で左が金鳳花、右が節黒仙翁だと思います。この写真は金鳳花。

アイリスの下の画像にあるデージーのような小花は、ユーフォルビア・フィリフローラ の花のかたちによく似ています。



デイジー  アネモネ  スミレ


気になるのは花の女神フローラの髪飾り、首の飾り、ドレスの刺繍、そしてベルトの花々です。髪に飾っていて見覚えのある花は矢車菊でしたが、この名前を思い出すのに数日かかりました・・・。


矢車菊に、イチイの実(ここに描かれていたのですね)、勿忘草がデイジーなどと一緒に髪に飾られています。矢車菊の花言葉は「教え」、イチイは「悲しみ」、勿忘草は「忘れないで」です。




クロリスが変身した花の女神フローラ
ダンテ神曲のマティルダ


女神ヴィーナスはシモネッタ・ヴェスプッチ、もうひとつには三美神の中央がシモネッタという説。そしてこの花の女神フローラがシモネッタではないかとも。

髪に飾る花の冠。矢車菊、イチイ、そして勿忘草の花言葉。これは22歳で亡くなったシモネッタではないかしら?と思わずにいられないんですよ。でも断定はできないんですぅ。顔が若くして亡くなった人ではないですよね。

クリスマスローズは中央のヴィーナスの足元にあります。

追記 「記事 プリマヴェーラ La Primavera」からの意外な事実。ヘレボルス(クリスマスローズ)はイタリア語でなんと!・・・つまり、パッツイ家であり、ヘレボルスと勿忘草との冠は、「子供の父親(ジュリアーノ)を殺したのだということを忘れない」・・・。そしてヴィーナスの足元のヘレボルス(クリスマスローズ)は踏み砕かれるのでしょう。

画像の左下はワイルド・ガーリック。これはガーリックの匂いがするもの。魔よけでしょうか?右側の上は節黒仙翁でナデシコに属します。そしてその下は、カモミールです。

イチョウの葉のような花も刺繍にあります。イチョウは「鎮魂」の意味があります。


左上がヘレボルス(クリスマスローズ)。ドレスにカーネーションやバラ、カモミールあるいはデイジー、スズラン(たぶん)などが刺繍されています。

この花の女神フローラは、ダンテの神曲に登場するマティルダとなっています。現在でも明らかになっていない当時の人物ですが、ミケランジェロがその子孫と言っていたマティルデ・ディ・カノッサという女性ではないかとい言われている時期もありました。

もし仮にマティルダ夫人とこの女神フローラを 重ねて描いたとしたなら「矢車菊」の花言葉もわかります。山頂の地上楽園では、このマティルダ夫人がダンテに「教え」、「清める」役割だったからです。




女神ヴィーナスの足元に描かれた花々


茎の太いフキタンポポが3本。花言葉は「思わせぶり」です。左奥の白い花はワイルドガーリックになるのでしようか?ひとつひとつの花のかたちは似ていますが・・・、



女神ヴィーナス アプロディーテー
ここでは地上のヴィーナスとして


ダンテの神曲説ですと、このヴィーナスは、ダンテ自身の心の恋人だったベアトリーチェを重ねています。

いろいろ説はありますが、もし「東方三博士の礼拝」のようにメディチ家の人々を描きながら、メディチ派を象徴した作品を依頼したデル・ラーマのように、この作品、礼拝堂の祭壇画にするつもりだったのでは?

そういえば4月はウェヌス(ヴィーナス)の祭事がある月でした。

記事 「4月の寓意 オウィディウス「祭暦」 から

妊娠しているような女神。仮にジュリアーノがメリクリウスだとすると、プリマベーラがシモネッタで、ジュリアーノの妻フィオレッタ・ゴリーニがこの女神ヴィーナス(地上のヴィーナス)かもしれません。ところが・・・。



ヴィーナスとマルス 1485年
シモネッタとジュリアーノといわれています。
プリマヴェーラとドレスが似ています。


さてダンテの神曲 煉獄編で「白い面帕をかけ、橄欖(オリーブの誤訳)の冠を戴いた夫人が目の前へあらわれた。緑のマントの下には燃え立つような朱の衣をまとっていた。」とベアトリーチェ登場の場面を語っています。

ボッティチェッリが手にかけたマントを緑としていたなら、三色は合致するわけです。この色に意味があるんですね。

信仰の白、希望の緑、愛をあらわす朱なんです。

愛と美の女神ウェヌス(ヴィーナス)に捧げる花の銀梅花は、結婚式や祝い事、そして祭祀の花冠を花冠につかわれ、愛を象徴するお花。



ヴィーナスの神木 銀梅花



魔よけのシダ



柞の木


ヴィーナスのアーチには柞の木(いすの木)と思われるのですが。花のつけていない銀梅花の葉でしょうか。日本では「柞の森(ははそのもり)」は季語で歌われたりしますよね。「母」と重ねることが多いのです。でもフィレンツェはどうなんでしょう。

さて魔よけのシダ。シダのなかでホウライシダの仲間のひとつに「ヴィーナスの髪」と呼ばれているものがあるんですよね。葉ではなく根だそうですが、美しい黒髪のようだとか。その所以なんですね。

足元にあるお花の画像を見てください。黄色いお花がわかりますか。銀梅花は黄色もあるんですよね。手元には白いお花のものしかありませんでしたので、ごめんなさい。

この作品には野襤褸菊も描かれているそうです。花言葉は「遭遇」だそうですが、ボッティチェッリは花言葉も書き込んでいるとありました。ひとつのお花に花言葉はたくさんあります。



プリマヴェーラ 三美神
神曲説では「三元徳」


三美神を象徴する三つの言葉は、ダンテの神曲説を用いると、意味がかわってきます。

三美神 象徴する言葉はこちら
記事「三美神 Yves Saint-Laurent

神曲では三人の天女が七元徳のうちの三元徳だという説を用いていますが、4つの自然徳と3つの神学的徳にわかれます。この三元徳(3つの神学的徳)を、ダンテの神曲での三人の天女の象徴されていると解釈されています。この四元徳はプラトンの国家で論じたもの。この三人といっしょにダンテの神曲に登場します。

「新プラトン主義に基づく作品でキリスト教の道徳を描いている」という解釈がありますが、このダンテ説に基づくもので、三美神ではないのです。そうするとホーラ説(時、四季の女神説)はなしかしらん・・・。


キリスト教徒の七つの枢要徳といわれる七つの美徳からも引用できます。

ちなみにボッティチェリが描いた七つの美徳の一枚はこちら
記事「七つの美徳 ボッティチェリの剛毅

三元徳は、信仰 Faith 、希望 Hope 、慈愛 Charityです。三美神を象徴する言葉と違うでしょ。

ダンテ神曲 煉獄編 第29歌 要約
「一人は火のなかにいるなら見分けがつかないほど赤く、もう一人は緑玉からできたかのように緑一色で、第三の天女はいま振った雪かとばかり白かった」


ボッティチェリの地上のヴィーナスと、ダンテが描いたベアトリーチェとの衣の色と同じ天女たち。ところがボッティチェリは信仰の白いドレスを三人に着せています。

一番右の天女は翡翠(緑)、エメラル(緑)、サファイア(青)のような色味の宝石を胸にさげています。むかいあう一番左側の天女はルビーのような赤い宝石。二人は真珠のようなティアラをつけています。

ただひとり、後ろ向きの女性はなにも象徴するものがありません。白一色です。視線は暗殺されたジュリアーノがモデルとされているメルクリウス(英読み マーキュリー)にいっているようにも。

一番私が気になるのは彼女の首。なんども書き直したのか、顔をすげ替えたのかというくらいに不自然さが不気味なんですよぅ!


ところが右側の天女がジュリアーノとされるメルクリウス (英読みでマーキュリー)と同じポーズなんですね。これは何か意味があるのでしょうか。

ヴィーナスの誕生の女神ホーラと同じスタイルです。 メリクリウスとなれば三美神ではなく、「パリスの審判」を思い出しますよね。またウェヌス(ヴィーナス)の子クピドに愛をおしえるコレッジョの作品も有名ですが、ウェヌスとメルクリスもマルス同様に姦通したようです。

「Detail of the Three Graces from the cleaned state of the painting. On the right side, Caterina Sforza」 by wiki



カテリーナ・スフォルツァ 部分
ロレンツォ・ディ・クレディ(Lorenzo di Credi)


ヴィラゴ・ディタリア(イタリアの女傑)と異名のあるカテリーナ・スフォルツァ(1463-1509)だとあるんですね。肖像画の美女ルクレーツィア・ランドリアーニ(Lucrezia Landriani)の娘です。

彼女は暗殺されたジュリアーノの従兄弟ジョヴァンニ・デ・メディチ・イル・ポポラーノ(1467ー1498)と、1496年に三度目の結婚をします。ヴィラ メディチ・ディカステッロの持ち主ですね。

ボッティチェリの作品依頼に名があがるロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコ(Lorenzo di Pierfrancesco de' Medici  1463–1503)の弟。



La Villa di Castello


最初の夫はジローラモ・リアリオ・デッラ・ローヴェレ(1443-1488)で、ジュリアーノの暗殺したといわれていたバッツイ家の陰謀の黒幕といわれた人。ということは、これは暗殺されたジュリアーノへの追悼の絵?

首謀者といわれたその妻を描いたのでしょうか?

記事
Sandro Botticelli サンドロ・ボッティチェッリ
記事
カテリーナ・スフォルツァ(Caterina Sforza)の謎 ボッティチェッリ プリマヴェーラから

ロレンツォと敵対関係にあったフェデリーコ・ダ・モンテフェルトロも義弟の暗殺の絵を匂わせるような作品を依頼しています。下記にリンク先をご用意していますが、この絵も謎の部分が多いようです。


このジローラモも、パッツィ家の陰謀の陰謀で弟ジュリアーノを暗殺されたロレンツォ・デ・メディチが暗殺させたといわれていたます。

現在はこのロレンツォとジュリアーノ暗殺は、フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロの名があがっていますね。

このフェデリーコの小書斎(ウルビーノ)にボッティチェリのスケッチからつくられた寄木細工が残っています。またこの人の先祖はダンテ 神曲の地獄編と煉獄編に登場しています。

記事「フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ 小書斎」 神曲 地獄編の子孫

さーて、このカテリーナの横顔ですが、・・・



カテリーナ・スフォルツァ,メディチ
マルコ・パルメッザーノMarco Palmezzano


この絵が描かれたときは、パッツィ家の陰謀(1478年)の首謀者の妻だったのでしょうか?1473年の11歳のときに結婚。そしてこのマルコ・パルメッザーノが描いたときにはメディチ家の夫人だったわけです。

暗殺首謀者の妻だったカテリーナ、1496年にメディチ家に嫁いだ彼女と三美神、三元徳の天女がつながるのは、暗殺者を忘れるなということなのでしょうか?

あるいはイタリアの平和を乱すこととなったカテリーナの最初の結婚。その当時は三国同盟が結ばれていたのですが、この結婚で、フィレンツェのロレンツォ(メディチ家)、ミラノのイル・モーラ(スフォルツァ家)、ヴェネツィアの共和国との関係も変化します。その三国を三美神が象徴しているのでしょうか?

こういう説まであるということで。今後に続きの記事で。




メルクリウス
ダンテ神曲説ではアダム


ジュリアーノ・デ・メディチ(1453年 - 1478年)という説のあるメリクリウス。ボッティチェリの東方三博士の礼拝(The Adoration of Magi)に描かれているジュリアーノにそっくり。(右側の列でかがんで振り向いているのが彼でしたよね。)

記事
ボッティチッェリ サンタ・マリア・ノヴェッラ教会 「東方三博士の礼拝」の謎


暗殺される前は愛人シモネッタと幸せなときを過ごしていました。レクイエム的なジュリアーノが登場するボッティチェリの作品には「ヴィーナスとマルス」(1478年)の作品になくなった二人が描かれています。

1478年に亡くなったジュリアーノ、1482年頃の作品だといわれている 「プリマヴェーラ 春)」 。

ここではメルクリウス (マーキュリー、ヘルメスと同一)として描かれています。

ボッティチェリのLa Primavera  「プリマヴェーラ春)」は、ダンテの神曲において天国にもっともちかい煉獄の「山頂 地上楽園」を描いているということですが、メルクリウスは煉獄から天国の扉を開くつもりなのでしょうか。



メルクリウスの足元の亜麻
花言葉は「感謝」


この 「プリマヴェーラ春)」 のなかで、メリクリウスを示す翼のある靴と帽子、アポローンから与えられた2匹の蛇が巻き付いた杖カドゥケウスに、アルゴスの殺戮者とよばれる所以の剣でしょうか、ホメーロスやオウィディウスにある物語のとおりのいでたちです。

はじめは、ジュリアーノの兄、ロレンツォ・デ・メディチ(1449-1492)あたりが依頼したものかなと思いましたが、ラーマ家の祭壇画がメディチ家にあるように、誰が依頼したのか知りたいですよね。

ロレンツォ豪華王の従兄弟 ロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコ(Lorenzo di Pierfrancesco de' Medici  1463–1503)、ジョヴァンニ・デ・メディチ・イル・ポポラーノ(1467ー1498)にわたり、ヴィラ メディチ・カステッロ(別荘カステッロ荘)に飾られていた・・・。

のちにカテリーナ・スフォルツァが嫁ぐメディチ家の分家。

メリクリウスはオレンジの実をカドゥケウスで突こうとしているのに、何かが邪魔をしているようです。「雲」と表現しているようですが。

牛追いの杖カドゥケウスって「風の神」も封じるものじゃなかったでしょうか。ゼフィロスの姿が死人のようなのは、ゼフィロスの力をさえぎっているのではないでしょうか。

オレンジには白い花が咲きますが、ご覧の通りに禁断の果実として描かれているようです。


アプロディーテーの子、すなわち「ヴィーナスの誕生」のウェヌスのことですね。アプロディーテーと軍神アレースとの子ともされていますが、女神ガイアの子とも、ゼウスの子とも神話にはいくつも説があるエロース(クピド)。そしてアプロディーテーとメリクリウスの子ともされています。

ルーベンスの書いた「クピドの教育」は、クピドを見守るヴィーナス、そしてクピドに教えるメルクリウスが描かれています。

不思議です。

追記
このメリクリウスの不思議はマルティアヌス・カペッラ説の「記事 プリマヴェーラ La Primavera」で解消されますね。

ヘシオドスにおいてはカオスより生まれた原初の力。あるいは原初の卵から生まれ、その殻は天となり地となったともいわれています。

ネオプラトニズム(新プラトン主義)ともいわれている作品。クピドの別名エロス(愛)が登場する、プラトンの「饗宴」で「エロス(愛)とは何か」とはじまります。

記事 「クピドとプシュケの物語」
記事  「ヴィーナスとクピド」

その「饗宴」で語ったエロスがなんたるかが描きこまれているのでしょうか?

この目隠し。恋は盲目ではありません。罪に結びついた瞬間です。その矢はカテリーナ・スフォルツァを示していますか?

ほんの少し矢がはずれるような位置。その矢はメルクリウスの右足にまっすぐ向けられている気もします。

あの詩人のリルケがボッティチェッリの作品には「悲しみ」が伝わってくると書き残しています。そのお話しは次にいたしましょう。

さて最後は薔薇のおはなし。描かれている白と赤(ピンク)の花は、ヨーク家の白い薔薇、ランカスター家の赤い薔薇を描いて、薔薇戦争とロレンツォ、ジュリアーノの暗殺に引用したのではないかしらと思いました。



ランカスターの赤いバラ ロサ・ガリカ
ヨークの白いバラ ロサ・アルバ・セミプレナ


ただ描かれている薔薇の花弁は多く、違う品種かなって思います。ヴィーナスの誕生に描かれている薔薇は、この右側のロサ・ガリカ。

記事「Sandro Botticelli's Rose ボッティチェッリの薔薇 ヴィーナスの誕生の庭へ

ここでの薔薇はどの薔薇なんでしょうか?

| サンドロ・ボッティチェッリ | 15:55 | - | - | pookmark |
Sandro Botticelli ボッティチェッリ



ボッティチェッリ 受胎告知 1449-50
プーシキン美術館所蔵


今年、没後500年を迎えるサンドロ・ボッティチェッリです。ボッティチェッリは受胎告知を何枚も描いていますが私が知るところではこの作品をいれて7枚。

記事 「サンドロ・ボッティチェッリ 受胎告知」には6枚の作品が!


記事
ボッティチェリ 至福の花々サンドロ・ボッティチェッリ
掲載作品
ヴィーナスの誕生 /酔い 果実酒の寓話 
聖母子と八天使/ ヴィーナス
ウェヌス(ヴィーナス)・プディーカ
春(ラ・プリマベーラ)/ ミネルヴァ(パラス)とケンタウロス
眠る幼子キリストを崇拝する聖母 ほか


ボッティチェッリの聖母子、祭壇画、さまざまな作品に関してはXAIからごらんください。リンク先記事から、たくさんの作品をみることができます。

記事
サンドロ・ボッティチェリ ヴィラ・レンミ

今日はまた新しいボッティチェリの作品をご紹介したいと思います。



Virgin and Child(聖母子)
ケンブリッジ大学フィッツウィリアム美術館


この聖母子には写本が置かれていますね。このボッティチェリの時代は、まだ印刷の発明がされていない時代で、読み物も聖書もすべて手書きの「写本」です。装丁や挿絵の美しさと豪華さ。ボッティチェリが描いたその「写本」は、小書斎でも有名なフェデリーコ・ダ・モンテフェルトロが肖像画で手にしているのと同じ装丁です。

フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロは、ボッティチェッリのパトロン メディチ家のロレンツォ(カトリーヌ・ド・メディシスの父)と敵同士でしたが、この写本にまつわる話でロレンツォの寛大さが示され、フェデリーコは敬意の念をあらわしています。


フェデリーコは同時代に賞賛された一人ですが、フェデリーコの生涯を歌ったラファエロの父ジョバンニ・サンティは、そのなかで当時の偉大な画家に、このボッティチェッリの名をあげています。

詳しくはこちら
「フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ 小書斎」
神曲 地獄編の子孫

こちらは友人にブログの記事「サンドロ・ボッティチェリ 聖母子(トンド スタイル )」にあるノースカロライナ美術館所蔵の「幼子への敬慕(子どもの敬慕)にとっても似ています。



Adoration of the Christ Child  1500年頃
幼子キリストへの礼拝   ヒューストン美術館


弟子の手も加わったとして完全なボッティチェッリの作品とはいえないという説があるものですが、エジプトへの逃避を描いている作品です。

マリアとヨセフ、そして幼子イエスがヘロデ王から逃れるための逃避行。

記事
エジプトへの逃避途上の休息 天使か堕天使か
こちらからはカラバッジオ、そしてロココの画家フランソワ・ブーシェの「エジプトへの逃避途上の休息」がごらんいただけます。


次の聖母子はボッティチェッリが描く洗礼者ヨハネにそっくりの天使も描かれています。不思議なのは幼子洗礼者ヨハネだけがボッティチェッリの作品のなかで同じように描かれているのです。2008年に「イタリア美術とナポレオン展」で来日した聖母子ですが、この天使が幼い洗礼者ヨハネにそっくりですね。

マリアの顔は作品によってまったくさまざまに描かれているのに、この洗礼者ヨハネだけは同じ面影を残していませんか?



ボッティチェッリ  聖母子と天使 1465-67
フェッシュ美術館


天使や洗礼者ヨハネに重ねたモデルは誰なんでしょうか。このナポレオンの生誕の地として有名なコルシカ島にあるフェッシュ美術館は、ナポレオンの戦利品でいっぱいなんじゃないでしょうか。

ナポレオンは絵の価値がわかっていないと思うんですね、でも彼の叔父ジョゼフ・フェッシュ枢機卿(1763‐1839)は眼識や知識があって自分のコレクションとしたのではないでしょうか。

ナポレオンがレオナルド「最後の晩餐」のイエスの足元が描かれている壁を壊したのは有名です。おバカですね。


ナポレオンがフランス政府から戦利品には美術品を含めることという命を受け、捕虜、3000万フランなどをはじめ「略奪」したものです。

そのうちの「略奪品」を返還したものとルーヴル美術館に残されているものとがありますが、個人のコレクションになったこのボッティチェッリの「聖母子と天使」は、フェッシュ枢機卿が「略奪品」から自分のものにしたのかなって思いましたが。

さてボッティチェッリの聖母子ですが別ブログで2記事ほど書いております。

サンドロ・ボッティチェリ」 聖母子とマグダラのマリア
ボッティチェッリ 聖母子 ほんとうにボッティチェリ?という2枚

KAFKAではユディットに続いてフォーチュン」というサザビーズに出品されていた作品を紹介しました。お顔はボッティチェリのの女性の面影がありますが、裸体は躍動感あふれたスポーツ選手。
arei の別ブログでは、ボッティチェリ「我に触れるな」、「エステルの3つの物語」が追加になっていますよ。

こんな作品があったんだ!というのが、ボッテチェリの「聖霊降誕」、「アッシジの聖フランチェスコと天使」、そして天使さんの作品。これも見るべし!
  ↓
Sandro Botticelli サンドロ・ボッティチェッリ

ボッティチェッリの三連画はこちら
Sandro Botticelli サンドロ・ボッティチェッリ 三連画」キリストの変容,側翼の聖ヒエロニムスと聖アウグスティヌス
| サンドロ・ボッティチェッリ | 20:20 | comments(0) | trackbacks(1) | pookmark |
ボッティチェリ 至福の花々 (サンドロ・ボッティチェッリ)

ヴィーナスの誕生 1485年頃 ウフィツィ美術館所蔵
サンドロ・ボッティチェッリ(サンドロ・ボッティチェリ)

ウェヌスの誕生、あるいはヴィーナスの誕生といわれているサンドロ・ボッティチェッリの、1485年の作品。皆様もよくご存知ですね。
このボッティチェッリのヴィーナスの誕生を、ギュスターヴ・モローが模写しています。こちらからご覧ください。

サンドロ・ボッティチェリ & ギュスターヴ・モロー
過去記事ギュスターヴ・モロー 「アフロディテ」もどうぞ 
ルドン 「ヴィーナスの誕生」もご覧ください。
2010年記事「Sandro Botticelli ボッティチェッリ

ヴィーナスの誕生の場面

さて、ホメロス讃歌として伝承された「アフロディテ讃歌」をもとに描いたという一説がありますが、はたしてそうなのでしょうか。

ギリシャ、ローマ神話が好きな方ならすでにご存知のとおり、ヘシオドス 神統記にもある誕生のシーンには、「ウーラノスの去勢」です。

ガイアの息子であり夫でもある(近親相姦ですね)天空神ウーラノスは醜怪なキュクロープスたちを幽閉します。ガイアは怒り、子の一人クロノスにウーラノスの男性器を切り落とさせたんですね。

鋸のような刃がついた鎌を執り
父の性器を恐ろしくも切り取る
波間に投げ込むや
白い泡が不死なる肉塊から湧きあがる
そこから一人の女神が誕生した
畏怖するほどの美しい女神が上陸すると
その足元には草花が茂る
その女神を泡から生まれたアプロディーテーを
キュプリスのキュテレイアと
神も人もそう呼んでいる
ヴィーナスを開く―裸体、夢、残酷 by ジョルジュ ディディ=ユベルマン「天上のヴィーナスは天の去勢から生まれ、海と血と精液の混じり合う混沌の渦こそが美の源泉となっている。」

「ヴィーナスを開く」―裸体、夢、残酷 
ジョルジュ ディディ=ユベルマン著
書評 伊藤俊治氏(東京芸術大学教授)より引用

同時代の詩人アンジェロ・ポリツィアーノの詩篇ですが、フィレンツェの黄金時代を支配した、メディチ家の擁護にあったボッティチェリは、1475年のメディチの馬上槍試合で、ジュリアーノ・デ・メディチの「旗」をデザインします。一方、アンジェロ・ポリツィアーノは、「ジュリアーノ・デ・メディチの馬上槍試合のためのスタンツェ」を創作します。


この薔薇に関しては
Sandro Botticelli's Rose ボッティチェッリの薔薇 ヴィーナスの誕生の庭へ

アプロディーテの記事は
愛と美の女神アプロディーテー ヴィーナスの誕生
プラトン 「饗宴」 アプロディーテーの裏話


アンジェロ・ポリツィアーノ ラ・ジォストゥラ

そのアンジェロ・ポリツィアーノの九十九節は、ヴィーナス誕生の詩です。

波立つエーゲ海
胎内のティターンにより 天の神の陰部は去勢され
星辰がいくたびか廻る間に 白い泡に包まれて 波間に漂う
そこに喜びの瞬間が訪れる 人とは思えぬほどの乙女が誕生し
淫らなゼフュロスに吹かれるまま 貝殻に揺られて 岸へつく
天もこれを喜ぶかの如く

ヘシオドスの神統記と変わりませんね。ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」は、こうしたいくつもの類似性をもつ伝承から誕生したのではないでしょうか。

愛の勝利の薔薇を放つ花の女神フローラ。抱きかかえているのは西風のゼフィロス。そこからそよぐ風は、ヴィーナスを岸に導きます。右には美しい花の刺繍のローブをヴィーナスに羽織らせようとしている、時と季節の神ホーラです。ボッティチェリの花には、金刺繍が施されたごとく薔薇が描かれています。

この「ヴィーナスの誕生」は、ご存知のように「春(ラ・プリマベーラ)」と対といわれています。そしてもう一枚のボッティチェリの作品と、三枚揃って装飾されたといいます。


最も古い壁画 宮廷画家アペレスのアフロディテ・アナデュオメネ

さてヴィーナスの誕生で古典とされている絵画作品です。

「Venus Anadyomene」
障壁画「 アフロディテ・アナデュオメネ」 by アペレス

アレクサンダー大王の宮廷画家アペレスの「Venus Anadyomene アフロディテ・アナデュオメネ」(海から上がるアフロディテ)が描かれた、ポンペイの障壁画。これをモチーフにしたものが、アフロディテ・アナデュオメネ 様式といわれ、ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」、ティツィアーノ「アフロディテ・アナデュオメネ(海から上がるアフロディテ)」、アーノルト・ベックリンアングル「アフロディテ・アナデュオメネ(海から上がるアフロディテ)」、ウィリアム・アドルフ・ブグロー「ヴィーナスの誕生」、テオドール・シャセリオー「アフロディテ・アナデュオメネ(海から上がるアフロディテ)」などがあげられるようです。
この「天上のヴィーナス」を描いた「ヴィーナスの誕生」は、メディチ家のロレンツォ豪華王の一族、通称 ロレンツィーノ(分家)が依頼したものと仮定して。


ボッティチェリ 豊饒の擬人像 コンデ美術館

その「ヴィーナスの誕生」を依頼したロレンツィーノ自身(分家)が、花言葉とともに「春(ラ・プリマベーラ)」に描かれてますね。そのまえに、ボッティチェッリの他の作品もご紹介しましょう。


Automne ou Allégorie contre l'abus du vin(1490-1500)

?「酔い 果実酒の寓話」?
「豊饒の擬人像」でした。

ワインの飲みすぎを忠告する寓意画?果実を頭にのせた女神は、ローマ神話の果実・結実の女神フルクテスカ、ローマの果実と果樹との女神ポーモーナ、すべてのものをお酒に変える力を持つという伝説の女神オエノ、そしてワインの神バッカスと同一とされる女神 シレニーなどと、想像がふくらみます。
ギリシャ神話でイオス(エオス)、ロシア神話ではアウローラ(オーロラ)と呼ばれる「夜明け(黎明)の女神」でしょうか。最近、ワインのネーミングにも使われていますね!
Quando la pera è matura, casca da sè.(イタリア諺)
梨は熟すと自ら落ちる。

ボッティチェリの作品は「Automne ou Allégorie contre l'abus du vin」はフランス語のタイトルを引用していますが、Automneは落ちる。イタリア語の諺の「casca」も落ちるですよね。

「ワインに溺れると自ら落ちる。」
そう、ボッティチェリは忠告しているのでしょうか。

花は酔いのクピドの胸元を飾り、主役は果実。葡萄は復活。りんごは禁じられた愛。二人のクピドは「悦楽」の寓意像なのでしょうか。タイトルのワインが葡萄酒を示すのであれば、聖体である血や生け贄を意味します。つまりキリストの血。

女神が手をひくクピド(キューピッド)は、地に足がついているのか、いないのか。「酔い」がまわった小さなクピド。まるで「小さな樽」という意を含むボッティチェリのようです。

2010年追記
この女神が手をひくクピドはさくらんぼが首と足元に。これはメディチ家の紋章の赤玉を象徴しているのではないでしょうか!

キリストとメディチ家を対比させているのかなって。気になるのがキリストの血を象徴するクピドに絡む蛇。1490年以降から1500年頃の作品で、ロレンツォ豪華王がなくなりサヴォロラーナによってメディチ家を追放、サヴォロラーナものちに処刑されるという10年間のいずれかに制作された作品。
2010年追記
果実を詰め込んだ籠ですが、ボッティチェリの「東方三博士の礼拝」が最初にあったサンタ・マリア・ノヴェッラ教会のトルナブオーニ礼拝堂の壁画(ギラルダイオ作)に、そっくりなモチーフの女性が描かれています。「システィーナ礼拝堂」では神聖な薪を頭に。

記事「サンタ・マリア・ノヴェッラ トルナブオーニ礼拝堂のメディチ家

記事「サンドロ・ボッティチェリ Sandro Botticelli システィーナ礼拝堂
それではボッティチェリの多くある聖母子から1枚ご紹介します。皆様もよくご存知の作品かと。


ボッティチェリ カテリーナ・スフォルツァの聖母

La Vierge à lEnfant avec anges chanteurs 1477年

聖母子と八天使 1477年
ラクツィンスキーの聖母 国立絵画館
(カテリーナ・スフォルツァが聖母)

カテリーナ・スフォルツァに関しては
記事「Sandro Botticelli サンドロ・ボッティチェッリ
記事 カテリーナ・スフォルツァ(Caterina Sforza)の謎 ボッティチェッリ プリマヴェーラから
1490-1500年の10年に及ぶ制作は、ボッティチェリの最大のパトロンであるロレンツォ・デ・メディチが死去する2年前からはじまりますが、1480年代後半から、ロレンツォ・デ・メディチの政策は、社会不安をひろげていきます。ロレンツォ・デ・メディチの「冬」とともに、ボッティチェリも翳りがみえてきます。この時代に描かれたボッティチェリの作品には、「柘榴の聖母」、「受胎告知」などがあります。美しいのですが、なにか苦悩や陰鬱な表情がみえてくる作品。


ボッティチェリ「ヴィーナス」(ボーデ博物館) 三つ編みのヴィーナス

左「ヴィーナス」、右「恥らうヴィーナス」

「ヴィーナス」(1485年頃),「ウェヌス(ヴィーナス)・プディーカ」
右の手で髪を押え、もう一方の手でそのうるわしき果実を覆って
「ヴィーナスの誕生」のヴィーナスだけを黒地の背景に描いたボッテチェリの工房作。左は三つ編みのヴィーナス。右は薔薇と透き通るような布。

気になるのはボッティチェッリのヴィーナスは、いずれもウェヌス・アナデュオメネ(Venus Anadyomene, 海より出づるウェヌス)の形態を示していることです。

プラトンの「饗宴」にでてくる両性具有の第三の性。アプロディーテー(ウェヌス)とヘルメス(メリクリウス)の子で両性具有のヘルムアプロディテ(ヘルマフロディトス)を象徴しているようにも見えます。
記事 「プラトン 「饗宴」 アプロディーテーの裏話

宮廷画家のようなボッティチェリ。ボッティチェリの作品は、ロレンツォ・デ・メディチがパトロンとなってから、「表」にでたことがあったのでしょうか。メディチ家の衰退は、ボッティチェリの作品を埋もれさせることにもなります。

「人はパンのみに生きるにあらず、町にサーカスを」という古代ローマの政策が、ロレンツォ・デ・メディチ一族の言葉でもあり、市民から支持された政策でした。

そのフィレンツェで、ボッティチェリになにがあったのでしょう。メディチ家一族の擁護にもあったボッティチェリ。官能的な絵画作品を焼き払う反メディチの修道僧ジローラモ・サヴォナローラを支持します。ボッティチェリの作品も炎のなかで灰になる。


La Primavera 「プリマヴェーラ(春)」  結婚式の贈り物説で

最後のご紹介は、こちら。

Pallade e Centauro
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