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ディドロのお喋りな宝石 ポンパドゥール夫人
新年あけましておめでとうございます。
4日といえどまだまだお正月。
お正月気分でちょっと官能的な物語の挿絵をご紹介します。




お喋りな宝石 ドゥニ・ディドロ
海外版挿画 ジャン・デュラック


「お喋りな宝石」(1748年)はディドロの小説。「不謹慎な宝石」でも邦訳されていました。この「Diderot et Les bijoux indiscrets(The Indiscreet Jewels)」の邦訳では、私はジャン・デュラック(Jean Dulac)の挿画で新庄嘉章訳を愛読(?)しています。昭和44年の発行のもので、当時は幼児でしたが。

その挿画とポンパドゥール夫人、いえいえい、物語の寵姫ミルゾーザをご紹介したいと思います。

特に第29章”MÉTAPHYSIQUE DE MIRZOZA”、第54章”Trentième et dernier essai de l'anneau. - Mirzoza”は、当時27歳のポンパドルゥール夫人をモデルにした寵姫ミルゾーザが主にメインになります。一見好意的に描いているようにも見えますが・・・。

ちょっと物語の初めの初めを覗いてみましょう。

Ce fut donc l'an du monde 1,500,000,003,200,001, de l'empire du Congo le 3,900,000,700,03, que commença le règne de Mangogul, le 1,234,500 de sa race en ligne directe.


この数字って何だと思いますか?
ディドロが設定したこの小説の時代です。世界創造紀元が1500兆320万1年という時代。この物語の舞台、コンゴ帝国は紀元3兆9000億70万3000年の時をむかえます。(日本は紀元を神武天皇即位紀元(皇紀)から数えると今年で2669年目?、途方もないコンゴ帝国の歴史!)

この物語にはコンゴ帝国のほかに、フランスも存在している設定になっています。つまりフランスという国もあって、主役のコンゴ帝国は18世紀フランスを戯画した形式になっています。

さてさて。

そろそろ老年にはいるスルタン(皇帝)は賜ト僧(星占い)のコダンドに誕生した王子を占わせます。ところがコダンドときたら結局何も知らせることができませんでした。

この皇帝は宗教心に駆り立てられる一方で、王子の教育に画家、哲学者、詩人、音楽家、建築家、舞踏、数学、歴史、武道などを揃えます。こうして王子マンゴギュルがスルタン(皇帝)になります。

そしていよいよ。



お喋りな宝石 新庄嘉章訳
挿画 ジャン・デュラック


le règne de Mangogul, le 1,234,500 de sa race en ligne directe
「第1234500代皇帝マンゴギュルの治世が始まりました。」

このマンゴギュルがこの物語の主要人物ですが、1234500代ということは断絶することもなく続いた稀な家系ですよね。このコンゴ帝国のマンゴギュルこそルイ15世なのだそうです。

それではエピローグをこのへんにして、第3章からはじめます。

第3章 物語のはじまりの出来事
ルゾーザ(ポンパドゥール夫人)は、「陛下は死ぬほど退屈していますのね。」と心が楽しんでいない王に言いました。「いや、そんなことはない。」といって皇帝マンゴギュルはあくびをかみ殺します。

「22歳のわたくしにご寵愛を受ける資格がないといたしましても、せめてご相談相手には持ってこいだということだけはおわかりになっていただきたいと存じますわ」

ふぅ〜ん、なるほど。ディドロは「ご相談相手」となった経緯を知っていたのでしょうか。
 

下のご不興に宮廷の情事を引き出してごらんになりましては?」と、退屈そうな皇帝マンゴギュル(ルイ15世)にミルゾーザはそうすすめます。「陛下のご親類でご友人でもあるキュキュファ仙人にうかがってはいかかでしょう。」と。

当時のポンパドゥール夫人がルイ15世を観劇やオペラに夢中になれるように手を尽くしますが、ここでは、皇帝に「他人の情事」に関心を寄せるように誘います。そして仙人キュキュファが登場します。

フランスの迷信では吸血鬼、予言者(星占い)、妖術師などの根拠のないものに対して、啓蒙思想家たちは告発していきます。

この仙人キュキュファはこの物語のなかで、不思議な宝石を国王マンゴギュルに手渡すことによってコミカルな騒動が起こるのですが、このキュキュファは皇帝の親戚でもあり、友人でもあるという設定。

仙人は伝説ですから、ディドロら啓蒙思想家たちが告発する迷信と同様に「無知なもの」になるわけですね。そしてミルゾーザがわざわざそのキュキュファをうかがいましたら?とすすめるところ。

ディドロはこの無知なるものに頼る皇帝と寵姫を描いているわけですよね。「王の心を支配」するという占い師の予言が的中ですね。



寵姫ミルゾーザ


それでは次にすすみましょう。

第4章

姫にすすめられたとおり、キュキュファ仙人を呼び出す章句を唱えました。そして宮廷の情事を知りたいという望みを叶えるよう伝えます。仙人は断るものの結局望みを叶える「銀の指輪」を手渡します。

「指にはめた指輪を女にむけると、女たちの”宝石”(性器)が情事を語るだろう。ただしよからぬ好奇心だということを、とくと考えなされ。」

第5章

姫ミルゾーザ(ポンポドゥール夫人)にさっそく「銀の指輪」を伝えると、ミルゾーザは思わずゾッとします。ですが、ミルゾーザはシダリース、アリア、グローセなどの名をあげ、値打ちのある話が聞くことができるでしょうと、国王の好奇心を彼女たちに向けるました。

第6章

ルゾーザと国王マンゴギュルは、皇后の部屋で行われているカードの賭博に集まった女性の一人アルシーヌに「銀の指輪」を向けました。はじめての試み。どこからともなく声が聞こえ、二時間も情事を語りました。一同驚きながらも耳を傾けます。

ミルゾーザは「情事の話」に国王の好奇心を満たせるとすすめたものの、寵姫には指輪を向けないというう専制君主の男の約束をあてにはならないことを知っていたので指輪の恐ろしい力をみて考えこんでしまいます。「人を破滅させ、名誉を汚す指輪は後生ですから・・・」とすがります。

「どうして今日に限り、他人を気に病むのだ」と国王は言い放ち、試みをやめることを拒みました。

ここでは宮廷生活における賭博の様子、貴族の夫人たちの不貞が取り上げれられています。またディドロはいつも人のことなど気にかけない寵姫ミルゾーザ(ポンパドゥール夫人)を皇帝の口を借りて語っています。

これまでの章から、ポンパドゥール夫人の人物像がはっきりと輪郭をあらわすように描かれています。人を破滅させても、他人の名誉を汚しても、国王の寵愛をひたすら得ようとする寵姫ポンパドゥール夫人を。そして娯楽大臣といわれた彼女の姿を。

さて、国や国民に関心を寄せるどころか毎日の退屈をしのぐため、「他人の情事」を聞いて回るちょっとお馬鹿なマンゴギュル(ルイ15世)と皇帝の寵愛をひたすら守るべく、あの手この手を考える浅はかな寵姫ミルゾーザ(ポンパドゥール夫人)のお話しで、宮廷や貴族の不道徳だけを紛糾するには啓蒙思想家の名がすたると思ったのでしょうか。

このあとにフランス科学翰林院が登場します。日本ではフランス翰林院と約されていたアカデミー・フランセーズ(Académie française)とダランベールが会員だった科学アカデミー(Académie des sciences)の両方の学者たちを一度に批判するための造語かも。



第6章 指輪の試み アルシーヌ


第9章、第10章、第14章

9章 「宝石」はフランス科学翰林院の過激派と引力派の学者たちを刺激します。前者は矛盾横着で、後者は不合理から明晰しますが、どちらも手に負えない。解剖学者のオルトコーム博士は、「架空の仮定に原因追求するよりは、現象を放棄し、知識と経験からギリシャの弦楽器であり管楽器である「デルフス」の特性を持っていること確信するに至ったのです。

10章 オルトコームは「現世、誰でも不謹慎と咎められずに、自由に話すこができる。宝石たちが同じことを話すなら、そのことしか考えていないからなのだ。宝石の口が話す間、もう一方の口は沈黙している。梵天(プラーマ)が相反する感情を容易に同時に与えていたら互いに了解しあうなんてことができるだろうか?」

第14 オルトコームの宝石のお喋りについての実験は惨憺たる結果に終わります。銀の指輪を小指にはめて姿を隠した皇帝はその様子をみて、世の人がこのフランス科学翰林院の学者たちの有様をみて何と思うだろうと遺憾に思います。

アカデミー会員ではないディドロ。ちなみにダランベールはアカデミー会員です。科学アカデミー内におけるビュフォン派とダランベール派の対立ですが、引力派というのがニュートンの万有引力理論をもって、数学が自然哲学を裏付けるというダランベールをさしています。ところが、ディドロは会員ではないのですが、必ずしも数学的論証のみに基づくことはないとビュフォン派だったんですね。

このストーリー、オルトコームってダランベール?


さてお次はまたまた寵姫ミルゾーザ(ポンパドゥール夫人)と皇帝マンゴギュル(ルイ15世)の登場です。

第15章

第15章 婆羅門の僧たち

喋りな宝石」を学者たちが匙を投げて、今度は婆羅門僧たちが取り上げます。これは超自然的なものとして取り上げられました。「宝石」は婆羅門教と対立する教徒の悪心の仕業だと結論に達しました。皇帝マンゴギュルと寵姫ミルゾーザはこの儀式に参加します。「お喋りな宝石」の秘密を知っている二人は、もっともらしい大司祭の言葉に感心します。

さて僧侶は説教壇から説教をはじめます。あるものは暴論だと思い、あるものは誇大妄想だと思い、あるものは予言者の言葉として受け取り、あるものは狂信的に祈祷をはじめますが、誰もが生活ぶりは一向に変わりはしなかったのでした。

聖職者や狂信者、そして迷信の批判がなされている「婆羅門の僧」ですが、この「お喋りな宝石」から8年後、ポンパドゥール夫人は神の道へ心を向けます。

それは1756年ポンパドゥール夫人がイエズス会と協議した結果、「回心」することになり世間を驚かせたことにあります。これを本心からか疑わしいと窪田般弥氏は指摘しています。

彼女の回心とその人間性をクロイ公爵が書き残しています。



第8章 指輪の試み 小宴


クロイ公爵の日記から
「ここ数年にわたって、私がかいま見てきた彼女の実践目的は、国王の心をとらえ、文字通りマントノン夫人にならって、ついには国王とともに信心家になることだった。

彼女は世間周知の化粧をとりやめ、その次の火曜日には、大使たちを自分のつづれ織りの仕事場で迎えた。こうして化粧から仕事へとうつる。・・・彼女は口紅をやめようとしているそうだ。だが、本当は全く逆で、その日の彼女は大変な飾り様だった。そして王妃のところで職務を果たし、まるでそれまで別のことをしてこなかった人のように、平然たる様子だった。」

啓蒙思想家の友人を公認されているポンパドゥール夫人が「信心によって他の人を感化する」とは考えられないことという指摘もされていますが、ディドロが「第15章 婆羅門の僧」で述べているように、誰もが生活ぶりは変わらないってことなんですよねっ!

第18章 旅人 第19章 島人の容貌

の「お喋りな宝石」の騒ぎのなか、航海にでていたものたちが帰国してきました。航海者が連れてきたある島のシクロフィルという男性がお話しをします。男女の結びつきを判定する寒暖計の儀式。その神事で結婚を許されるかどうかの判定にくる円柱形や正方形などの宝石をもつ男女たち。そして神事で娼婦になるという判定を受けた異国美女がなんとコンゴの国の生まれだった話などが続きます。

またコンゴからみれば風変わりの異国の容貌も、相手の島からみれば「なんだ、コンゴは人間なんだって」という顛末。

「真理は国々によって異なる」という司教でした。


ここで思い出すのはディドロの「ブーガンヴィル航海記補遺」です。航海士ブーガンヴィルの実録航海記を読み、ディドロはブーガンヴィルの架空の物語を創作します。植民地政策の批判、島や人、そして精神の略奪の批判などが描かれています。もちろんこの18章、19章からも読み取ることができます。

ドゥニ・ディドロの記事 by remove
記事「ドゥニ・ディドロ ディドロと演劇
記事「ゥニ・ディドロ 百科全書の時代
記事 「ブーガンヴィル航海記補遺 その3
記事 「 ブーガンヴィル航海記補遺 by ディドロ
記事 「第3章 司祭とオルーの会話/第4章 司祭とオルーの会話の続き

ブーガンヴィルはもしかすると侵略してきた島民に置き換えられ、島の話をしているのでしょうか。ディドロの揶揄と考えると、シクロフィルはブーガンヴィルなのかもしれませんね。

第22章 指輪の第7の試み 窒息した宝石

第17章で「お喋りな宝石」の声をふさぐ「口籠」を求める貴婦人たち。第21章ではその「口籠」を商売にする宝石商が再び登場します。

ンゴのブルジョワの夫人たちは、「口籠」を持っていました。マンゴギュルはゼライル夫人に銀の指輪をむけます。ところが「口籠」のため、「宝石」は窒息してしまうのです。「宝石」の窒息は、その持ち主の窒息でもあるのです。

明敏なオルトコームは診察のうえ、口籠を切りました。

さて貴婦人たちは生命を脅かす窒息よりも汚名の方を選びはじめたのです。



第29章 ミルゾーザ 部分


第29章 ミルゾーザの形而上学−霊魂

る日ミルゾーザは哲学講義のため黒いスカートをはき、もう一枚のスカートは肩からマント風に羽織り、顧問官のかつらに司祭の角帽を被ると、蝙蝠のように見えましたが、彼女は哲学者気取りです。

の姿をみる皇帝に「今日は魂がどこに宿っているかを検討するつもりです。」マンゴギュルは「哲学者は頭に宿ると言っていた。」そこでミルゾーザは、「とんでもない。魂は初めに足に宿るのです。この点は"経験哲学"の基本的原理を提出することになると思います。云々・・・」

のとき寵臣セリムが「云々然々−−−(略)−−− やはり頭でございます。」

ラゾーザは「云々然々−−−(略)−−−、女性は心や品性をおろそかにした場合は魂は舌や目に宿ります。舌に宿れば無知なお喋りになり、目に宿れば外見を繕うためおしゃればかりをするようになる。−−−(略)−−−、婀娜な女性の魂は宝石に宿るもの。色香を漂わす女性は時には宝石、時には目に宿るのです。優しい女性の魂は心に宿り、時々宝石に宿るのです。高潔な女性の魂は心と頭に宿るのです。云々然々・・・」

臣セリムは「しかし優しく情の深い人々、いつまでも変わらない忠実な恋人などは、なにになるのでしょう。」と聞きます。

れは心ですわ」そういってミルゾーザは「私の心はどなたと結びつきたいかよく存じておりますわ。」


この章もそうですが、第2部も含めてコンゴ帝国の宮廷や社会制度、風俗などが明らかになっていきます。寵姫ミルゾーザと会話に登場した廷臣セリムは、リシュリューです。

ディドロはこの物語でフランス科学翰林院を批判していますが、経験的知識の主観から実験哲学の立場を強調しているのかなって考えたのは、ミラゾーザ(ポンパドゥール夫人)の言葉にある「経験哲学」です。百科全書派の思想家たちは日々進化していますが、ポンパドゥール夫人は知識の入れ替えができなかったんでしょうね。これは啓蒙思想家たちの思想を強調しているのではなく、揶揄されている気がします。

ポンパドゥール夫人の真の人物像でしょう。「哲学者気取り」ですから。

ヴォルテールの戯れ歌 ポンパドゥール夫人

啓蒙思想を取り入れているわけでもないのに保護するのは一流の知識人を味方にすることができ、いつでも政治に介入できる。信心家でもないのに回心は、前国王の公妾マントノン夫人のように、寵姫という位置を退いても国王の相談相手となれる。

どなたがこんな知恵をつけたのでしょう。そして似非哲学者ポンパドゥール夫人を罵倒するヴォルテールの戯れ歌、この「お喋りな宝石」で、彼女は諷刺されています。

啓蒙思想家たちのなかでヴォルテールが声を高らかにしたのは堕落した聖職者、超自然的な偏見(迷信、伝説、占い、予言など)、不正と平等、そして宮廷と貴族の不道徳やフランスの風俗についてです。



第24章 指輪の試み テリス


でもね、ヴォルテールさん、ディドロさん、あなた方も同じ不道徳をさらりとやっていたではありませんか?不思議な啓蒙思想家です。

ヴォルテールの記事 by RE+nessance
記事 ヴォルテールの哲学辞典
記事 哲学書簡 ヴォルテールとクエーカー教徒
記事 哲学辞典 by ヴォルテール 
記事 マルク=アントワーヌ・カラス事件
さて、ディドロの「お喋りな宝石」は続きます。第54章までの半分くらいは「指輪の試み」が試されるお話しです。ちょっぴり官能的にも描かれていますが、揶揄や諷刺はどこでもかしこでも読み取ることができます。

試される貴婦人や修道女の情事のお相手が同じ貴族だったり、婆羅門僧だったり、職人だったり。ぜひご購入のうえご一読くださいな。古書のほうで探されるとすぐに見つかりますよ。

さて後半(第2部)の第30章以降は本当に面白い。登場人物たちがです。物理や数学そして幾何学、歴史や風俗、哲学に絵画や演劇、文学などに詳しい方ならいろんな発見ができますよ、きっとこの伯爵はあの人物に違いないとか、肖像の件はあのことだとか、この事件はあれじゃないかとか。

ただ、そういう知識は読むことや見ることの楽しさに必要でしょうか?いえいえ、読書好きな方なら物語の楽しさを満喫すること。ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」のつまらないことといったら!


それに比べると、ずっと楽しめる1冊です。わたしの魂は頭にないもので、私が自分なりに解釈できた「章」とポンパドゥール夫人の姿をトピックしているだけなんですが、まだ気力のある方、続けてお読みくださいな。

第37章 指輪の第17の試み 芝居

劇中に指輪をむけるマンゴギュル。その話はさておいて、「普通は、俳優は戯曲のためにあるものだが、この当時は戯曲の方が俳優のために作られていた。」というところからはじまります。

俳優オルゴリの深々としたお辞儀、芝居がかった芝居。ディドロの演劇論「俳優に関する逆説」が、この物語を借り述べられているのです。

aleiの記事「ドゥニ・ディドロ ディドロの演劇」から、ごらんください。
第38章 文学談義

ラゾーザは寵臣セリエと翰林院会員のリカリックと文学談に花を咲かせます。ミラゾーザ(ポンパドゥール夫人)は、才女と自惚れていたわけではなく、才智のある人を愛していました。賭博を好む一方で、当時の小説や戯曲に見事な批評を下し翰林院会員や文学者とも会話をすることができました。テュグジグラフのタメルランの優雅なセリフ、節度のある動きを誉めそやします。



第38章 文学談義


タルメランって、ニコラス・プラドン(ジェローム・プラドン)作の悲劇「タメルラノとバヤツェットの死」からヘンデルが作曲したタメルラーノ(Tamerlano)を指しているんでしょうか。

ヴィヴァルディも有名ですが、タタールの皇帝タメルラーノに征服されたオスマン帝国スルタン(皇帝の意)バヤゼット、ギリシャの王子アンドローニコは捕らわれます。バヤゼットの娘アステーリアに恋したタルメラーノは、そのため婚約者のトレビゾンドの王女イレーネとアンドローニコを結婚させようとたくらんだりしますが、実は復讐に燃えるアストーリア、そしてアストーリアの思いを募らせるアンドローニコ。

アステーリアがタルメラーノを毒殺するのを止めるイレーネ、自殺をしようとするアステーリアを止めるアンドローニコ。タルメラーナは王女イレーネの心に打たれます。そこにバヤゼットの自殺の知らせに、王女イレーネとアンドローニコは、ずべてを許すように独裁者タルメラーナを説得します。タルメラーナの心を動かし、全てを許し、アステーリアとアンドローニコは結婚、そしてビザンチンの玉座を与えられます。

この戯曲は独裁者タルメラーナが寛容をもって全てを許したことを称え、独裁者の国が新しい王国となって平和を築くことを象徴しているんですね。

これは「お喋りな宝石」の文学談義で、啓蒙思想こそ国王が取り入れるべきとディドロはわざわざ「タルメラン」を談義させているのではないかと思ったんです。

そして批評を下せるけれど本質を理解していないミルゾーザをチクリと刺しながら、芸術を擁護するポンパドゥール夫人の姿も描いてる。そんなところでしょうか。そして第37章に続き自分の「芸術論」を語らせています。


さて、なんとルイ14世までもこの「お喋りな宝石」に登場しています。

第50章 マンゴギャルの祖父カノグルーの治世に起こった不思議なこと 
その1 areiの記事から引用
この時代の歴史はセリム(リシュリュー)がもっとも詳しく知っていました。「カノグルー陛下の御治世は数多くの成功と勝利で有名で、人々はこの時代を黄金時代と呼んでいます。大勢の夫人を持ち、貴族たちも競って陛下の真似をいたしました。また一般国民も知らず知らずのあいだに、同じ風に染まっておりました。以下要約・・・服飾の贅沢、食卓の贅沢、大金が賭けられる賭博に人々は多額の借金を重ねましたが誰も支払うことをしません。そのために人と金は失われ、さらに海外を征服し、多くの宮殿が建てられ、国民は飢えのために死んでいきました。国庫はからっぽです。そしてからくり人形の由来を申し上げたいと思います。」
ここではルイ15世治世も全く変わらないことをセリム(リシュリュー)の口を借りて語らせています。特にポンパドゥール夫人の数々のお城の建設までも揶揄していますね。他の章では、貴婦人が官職の売買にも及んだお話がありますが、ルイ14世の記事を読んでみてください。このセリムのお話しがよくわかります。
ルイ14世  唯一の信仰 唯一の法 唯一の王
ルイ14世 王権神授説の宮廷絵巻
ルイ14世 芸術への愉楽
ルイ14世  コルベールの重商主義芸術政策
ルイ14世 スペイン継承戦争 フェリペ5世への箴言
この物語ではミラゾーザ(ポンパドゥール夫人)とセリム(リシュリュー)は互いに不信感を持っているようには描かれていません。



第50章 
マンゴギャルの祖父カノグルーの治世に起こった不思議なこと


下記のリシュリュー枢機卿、リシュリュー元帥はwikiを参考にしています。

ここでのリシュリューはルイ13世の枢機卿およびリシュリュー公爵アルマン・ジャン・デュ・プレシ(Armand Jean du Plessis, cardinal et duc de Richelieu)のです。「欺かれし者の日」事件で16世紀のリシュリュー失脚を企てたのは、王妃マルゴのあとにアンリ4世の后となり類13世の母后マリー・ド・メディシス。一時失脚するものの宰相となった人叔父リシュリュー枢機卿はフランス文学学会であるアカデミー・フランセーズを創設し、パトロンにもなりました。

リシュリューの死後、18世紀になってヴォルテールやジュール・ミシュレ、モンテスキューがフランス国家に対する彼の功績を称えているほどです。

17世紀、ルイ14世では亡くなったリシュリュー枢機卿の後釜がマザランです。マントノン夫人の夫だったポール・スカロン(1610-1660)が「ラ・マザリナード」で諷刺していますよね。

ポール・スカロン マントノン夫人の最初の夫
さてルイ15世のリシュリューはリシュリュー枢機卿の甥。デギュイヨン公爵エマニュエル・アルマン・ド・リシュリュー(Emmanuel-Armand de Vignerot du Plessis de Richelieu, duc d'Aiguillon)です。


この「お喋りは宝石」が書かれた頃のリシュリューとポンパドゥール夫人は、どうだったのでしょう?宮廷内ではポンパドゥール夫人、ジャンセニスト、高等法院の三者に対して反対派の立場を取っていたんですぅ!!!

「お喋りな宝石」では文学談義に花を咲かせたり、他の章でも助け合ったり!

リシュリューがポンパドゥール夫人に恭順するようになるのは、この本が出版されたもっと後のことです。そしてリシュリューはショワズールの失脚後、ルイ15世の治世末期には三頭政治とよばれるほどの実力者!そしてポンパドゥール夫人亡き後は、デュ・バリー夫人一派だったんですぅ!ですからのちのマリー・アントワネットに疎まれ、このセリム、いえリシュリューは辞任することになるんですけど。

マリー・アントワネットが愛したもの
ジャンヌ・デュ・バリー 傾国の美女デュ・バリー夫人
そういえば、セリムが何か答えるとミラゾーラはすぐにその意見には同意しないようでしたね。文学談義からもリカリックからもっとうかがって御覧なさいなんて言っています。アカデミー・フランセーズの創設者の甥に。



第35章 指輪の試み アルファーヌ


ですから私ったは読み始めの頃はデギュイヨン公爵と呼ばれたリシュリュー元帥じゃなくて、ボルドーワインの銘柄シャトー・ラフィット・ロートシルト(Château Lafite-Rothschild)で、ポンパドゥール夫人に持ちかけたギュイエンヌ総督のリシュリュー男爵マレシャル(リシュリュー枢機卿の縁家)と迷ったわけです。

このポンパドゥール夫人と「宿敵コンティ公」とリシュリューの「王のワイン」のお話しにちょっぴり触れているのが過去記事にあります。

私の時代 マダム・ド・ポンパドゥール
それでは意外な人物が描かれているこの第50章 マンゴギャルの祖父カノグルーの治世に起こった不思議なことからその2として続けます。

第50章 その2
「からくり人形の由来は歴史から読んだことがあります。」とミラゾーザ。セリムは「いいえ、それは物事の真相をよく知らぬ者が書いたもの。御皇室の守護者キュキュファ仙人はあの当時の仮面舞踏会の一夜にあらわれ、私たちにまる24時間眠るように命じたのです。目が覚めると後宮は素晴らしいからくり人形の舞台にかわっていました。」

「陛下(ルイ14世)のおからだには、いたるところから細い糸が結ばれ、一人の年老いた妖女が絶え間なく動かします。彼女が糸を引くとすぐさま顧問官が立ち上がり、お国に危機をもたらすような勅令に印をしたり、−−−(略)−−−以下要約・・・風変わりな服装が流行り、みっともないお尻の女性たちは信仰心に身を捧げたり、人形を与えてやってしかるべき子供たちを早く結婚させる習慣もこの頃からです。」
からくり人形を操る妖女とはキエティスム事件を起こしたマントノン夫人でしょうか。そして勅令とはあのナントの勅令の廃止でしょうか。
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サン・シモンが残したものはマントノン夫人を批判的に書いたものはありませんでしたが、次の世紀の思想家たちはやっぱり彼女のことをうっすらと仄めかしています。



第36章 指輪の試み 伊達男たち


これでミラゾーザ(ポンパドゥール夫人)の心は決まったのでしょう。私もマントノン夫人のように「からくり人形」を操ってみせるって!

それでは最後の章 

第54章 指輪の第30(最後)の試み ミルゾーザ

廷のお抱え舞踏家シュラメクの葬儀で雄弁家のブルルブーブーが彼の才能とその輔弼によるマンゴギュルまでも称えた弔辞が読まれているなか、ミルゾーザはあまりの虚言に怒りのぼせて倒れてしまいます。もしやこのまま死んでしまうのではないかとマンゴギュルは銀の指輪を彼女に向けます。そしてミルゾーザの宝石は皇帝マンゴギュルへの真心を語ります。

そしてこの銀の指輪はキュキュファに返すことになるのです。

キュキュファは「日々を恋と栄光のうちにお過ごしなされませ。第1のものはミルゾーザ様がいつまでも差し上げることでしょ。第2のものはわたしが約束をしましょう。」

妖仙は梟の尻尾を握り飛び去りました。
倒れるくらいの内容です。ぜひ読んでみてください。


フリードリヒ2世がルイ15世の統治を「女の室内帽とスカートの治世」と揶揄しましたとおりのことをキュキュファも言葉を変えて皇帝に言っていますね。

7年戦争で啓蒙専制君主フリードリヒ2世を悩ます3枚のペチコート作戦の一人ポンパドゥール夫人でしたが、結局はフリードリヒ2世にかないません。

結局エリザヴェータ女帝が急死でなにもかも変わってしまいます。またそのエリザヴェータ女帝のあとのエカチェリーナ2世も、ポンパドゥール夫人同様に啓蒙思想をヴォルテールやディドロらに影響を受けた啓蒙専制君主です。この女帝の女官長エカテリーナ・ダーシュコワ公爵夫人はアカデミー長官ともなる人。

ハプスブルグ家 マリア・テレジア
ドゥニ・ディドロとエカチェリーナ2世
記事ではエカチェリーナ2世と当時フランスの王妃になったばかりのマリー・アントワネットを比べましたが、政治に口を出すポンパドゥール夫人、そしてフランス王妃の女官だったポンパドゥール夫人をロシアの女帝と女官長と比べると格下です。



はじめはフランスの啓蒙思想家たちはこの7年戦争を大歓迎したんですよ。ポンパドゥール夫人によってルイ15世の啓蒙専制君主としての国家を期待したと同じように。

ところがポンパドゥール夫人は、第29章で揶揄されていた「哲学者気取り」と同じで、「政治家気取り」に過ぎない人物です。第38章にあるように、「賭博を好む一方で、当時の小説や戯曲に見事な批評を下し翰林院会員や文学者とも会話をすることができました。」とありますように、「政治家と会話をすることができました」という程度だったのです。

ヴォルテールの戯れ歌 ポンパドゥール夫人
ちょっと人より広く浅く知識を有している人は、わたしたちのまわりにもたくさんいらっしゃいます。この「戯れ歌云々」記事ではそういったポンパドゥール夫人の「気取り」をおことわりして書いたものです。

彼女の政治的手腕というものですが、政治家としての手腕ではなく、知性と教養の部類で称えられたということなんだと思います。


さてこのマンゴギュルとミラゾーザは、ちっちゃなお子ちゃまが読む絵本のなかの王様との恋のお話しならそれで良かったのでしょう。ところがフランスという国を統治していく立場の国王。政治に口を出す辻君ポンパドゥール。

その姿を揶揄しているとはいえ、こうした二人が治世の実権を握っているのはいかがなものでしょう。

16世紀のフランス。愛妾ディアーヌ・ド・ポワチエに声をかけられたフランス王妃カトリーヌ・ド・メディシスが言いました。そしてルイ14世の王妃マリー・テレーズも。

「この王国フランスの歴史の本ですわ。いつの時代にもピュタン(辻君)が、政治の実権を握っていたことのあるこの王国の・・・」

「あの辻君にいつか国は滅ぼされる・・・」

フランスの王国の歴史、昨年のブログ記事の総集編でございました。

ルイ15世の世紀の治世は「恋と栄光の日々」の限り。
ポンパドゥール夫人にとって「黄金の時代」。
御伽話「お喋りな宝石」は今年の書初め。

今年もよろしくお願いします!
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